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海月の仔


 南の海での出来事です。

 海月の仔がふわふわ漂っていました。

 海月の仔は、生まれてこの方陸地と言う物を見たことがありませんでした。
 
 海月の仔は、ふと考えました。

「僕は、このまま暖かい水の中をあてどもなく漂って、一生を終えるのだろうか?」

「それでは何だか、つまらない。」

「そうだ!話に聞く陸地に上がってみよう。」

「何か新しい発見があるかもしれない。面白いことがあるかも知れない。」

 そこで、海月の仔はお母さんに「陸地へあがる」と言いました。

 お母さんは、そんなわけの分からない危険なところへ行くのはお止めなさい、と言いましたが、海月の仔は、一度決心したのだから、行ってみる、と言って譲りませんでした。

 そして、ついに海月の仔は、遠い遠い陸地を目指して進み始めました。

*  *  *  *  *

 上空を鳥が舞い、海月の仔は、陸地が近づいてきた事を知りました。

「ようし。もう一息だ。頑張るぞ。」

 そうこうするうちに、砂浜が見えてきました。

 海月の仔は、先を急ぎました。

 波打ち際に近づくと、寄せては返し、寄せては返し、ものすごい勢いで波が動くのでなかなか上陸できません。
  
 少し近づいた、と思うと、ぐいっと波ごと沖へ戻されてしまうのです。

「せっかくの陸地を目の前にして、どうする事もできないなんて。」

 海月の仔は、悔しくなりました。

「どこか、波の静かなところは無いだろうか。そこからなら、どうにかして上陸できるだろう。」

 そうして、海月の仔は、比較的波の静かな、入り江に近づきました。

 ここからなら、なんとか砂浜へ上がれそうでした。

 ちゃぷ、ちゃぷ、と静かに動く波に乗って、海月の仔はゆっくりと砂浜に移動しました。

 ところが、完全に体が砂浜に移動し終えた時、海月の仔は、悟りました。

「ああ、何てことだろう!」

「僕らの体は、陸地で生活する事はおろか、一人で立って歩く事もできないのだ!」

 海を見ると、潮がどんどん引いていきます。

 もう、波に乗って沖へ戻ることは出来ません。

 太陽が、容赦なく海月の仔を照りつけます。

 かわいそうに、海月の仔は、そのままそこに横たわったまま、干からびていくのを、ただ待つことしか出来ないのでした。


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