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たばこ超高密度のからっぽ空間キスについてふたつのアイシテル最後の月後遺症12.25 夜に寄せてチョコレートの日偶然のかみさま

たばこ

終わったあと
君はかならず
たばこを吸う

倦怠に満ちて
一分前に起きたこと全てを

忘れたいみたいに

その横顔を眺めている間
私が一番孤独なとき


私は君の
たばこになりたい

灰になって落ちて消えて
忘れる必要もないような

 

 

超高密度のからっぽ空間

あなたを「好き」に
飲み込まれてゆく

わたしの中の虚ろなまぐま



キスについて

キスをするとき
目をつぶる

その瞬間が
一番怖かった

目を閉じても
そこに
いてくれますか

あなたはそこに
いてくれますか

わたしは怯える

もしかしたら
唇は触れることなく
目を開けたら

あなたはいない

かもしれない



だけどもし
あなたも同じ恐怖を感じていたなら

滑稽

滑稽で悲しい


ふたつのアイシテル

男のアイシテル

「幾千の愛を囁けば
僕を信じてくれるのだろう」

女のアイシテル

「幾千の愛を囁けば
私だけのものになってくれるの」


最後の月

優しいひとじゃ なかったよね
あなたは むしろ
冷たかった

今日の あの満月みたいに

私たちを 黙って 見下ろしていた
あの満月みたいに

私の滑稽を 醜態を 涙を
見下ろしていた
あの満月みたいに

あなたはいつも 冷たかった

ううん、ほんとは優しかったのだけれど
優しさの奥に 何かが

冷たかった

だけど好きだったんだよ

あなたが好きだったんだよ

冷たさも含めて
あなたが好きだったんだよ

もう 取り戻せない
もう 手が届かない

あの月




私とあなたは嘘をつく
かっこつけたくて

私とあなたは見抜こうとする
嘘の裏側を

一番かっこ悪いところが
見たい

でも相手に
見せたくはない

嘘の投げあい
さぐりあい

繰り返されるイタチごっこ

嘘をつく理由
恋を終わらせないため

恋の終わる理由


終わらせたくなかった
だけなのにね



後遺症

あなたの好きだったものは
みんな嫌い


12.25 聖夜に寄せて

聖夜に寄り添う恋人たち
以前の私は
その姿を見るたびに

「きっと幸せなんだわ」

なんて
無邪気に思っていた
ちょっと暖かいものを見たような

でも本当は
恋人たちの幸せは

壊れやすいガラズ細工みたいなもの

いま
私は

恋人たちを見ると
切なくなる

「こんなに綺麗なのに」

「いつか壊れてしまうの?」


だけどきっと
だからこそ
綺麗だから

優しいから

聖夜よ
今夜だけでも
恋人たちを

包んでください



チョコレートの日

バレンタイン

それはチョコレートそのもの。

「渡せなかった・・・」

苦ーいつぶやき。

思いは来年までおあずけ。

自分で食べるのも切なくて

女友達にあげちゃったり。

「昨日お父さんがもらってきたの。食べて」

なんてウソついて。

カカオの苦さ。

でもね

チョコのもう一つの味。

「渡しちゃったーーー!」

この甘ーい気持ち。

世界一幸せな一日。

お返しくれるかどうかは、

とりあえず、

おいておいて。

ようやく思いを伝えることができた。

それだけが

何より大事。

チョコの伝える言葉は一つ。


「これからも君のこと、
好きでいていい?」


偶然のかみさま

卒業式の人ごみの中
私の瞳が
あなたを捕らえた

条件反射で
顔をそむけて
三秒待って
落ち着いて

あなたを見た

私に気づくあなた

「ひさしぶり」

その笑顔

私も笑って

震える足で
三歩あなたに近づいた

「就職決まった?」

「なんとかね」

たわいない言葉

どう引きとめようか
どう引き伸ばそうか

あなたと話す時間を
一秒でも多く

一秒でも
多く・・・・


・・・・・・

立ち去る
あなたの後姿を

私はうつむいて見送る


わかっている

これが最後の偶然

もう会えないんですね

もう偶然の神様を期待することは
できないんですね

キャンパスで
あなたのスラリとした後姿を探すことも
もう

できないんですね

四年間伝えられないままでした

たぶんあなたは
わたしの
永遠のひとに

なるんだろう


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