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心のうた
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ホーム携帯電話MOVEネットという名無しの落書きに関する考察
詩を吐く顔の見えないともだちに送るうた



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雨の音で目を覚ました

誘われるゆるやかな幸福感

屋根に守られ
壁に守られ

冷たい雨は外に

我が家
私のいられる場所


携帯電話

わたしたちは常に繋がっている
どこにいても誰かと

つまり

絶対の孤独の喪失

それがもたらすものはなんだろう

あの深淵の喪失
あの源泉の喪失

もたらすものはなんだろう

わたしたちはだんだんと

弱く
浅く
軽く
小さく
薄く

なっていく

ああ、
と一つため息をつこう

きっと
とても大事なものが
失われてしまったのだから




MOVE

「動け!」

何もかもがいやになりそうなとき
心にそう叫ぶ

だって私は
動くために生まれた
止まるためじゃなく

不幸でもかまわない
泣きたければ泣けばいい
今、動いていることに意味がある
昼も夜も拍動する心臓のように

さあ耳を澄まそう
全ての生物、無生物が叫んでいる

「動け!」

それだけが私にできること
神様がそれだけを望んでいる

きっと宇宙は
私を生むために生まれたから




黒い雲が
空と地を断つ

空気が異様な熱を帯び
街はいま
狂う寸前

そのとき

大気に亀裂

街は瞬間
青く焼けた
暴力的な音と光は
私の心も焼き付けた

日常が雨に崩される
日常が風にさらわれる
日常が

そのまま壊れればいい!

神話が始まるかもしれない

はかない期待



ネットという名無しの落書きに関する考察



私という個を保つもの

それは
私を保護する鎧だろうか

あるいは

私を縛る鎖だろうか

名を失えば自由になれる?

鎖から解放される?

思考 感情 言葉に乗せて

自由に?

ただ一つ分かること

名をなくせば


私は無


壁に残る爪あと

爪はどこ 指はどこ


私はどこ


詩を吐く

生きることは、日々
たましいに汚れを溜める

毒素を放つ汚物を

毒がわたしに沈殿する
たましいを腐食しながら

その毒を浄化するため

書く

吐くように書く

詩は、はきだめ

たましいが死なないように
たましいの排泄物


これが詩の聖なるりゆう
醜よりすごい美はないから


顔の見えないともだちに送るうた


メールの文字のむこうに
泣いている君が
見えた

「もうネットはしない」

なんて苦いことばだろう

プログラムの網の目を
くぐりぬけて

君を
抱き締めにいきたかった

傷ついた君を
ただじっと
抱き締めたいと

優しい君が
泣いている

それだけで
僕は息がつまりそうだ

君に何があったんだい?
君は何に絡まっているんだい?

君を切なくさせる
意地悪な糸を
僕はほどくことが
できるだろうか?

僕らは一度も顔をあわせたことがないね
お互いについて
何も知らない
情報は全てうそかもしれない

思えばなんて
弱いつながりだろう

「ワタシガ嫌イデスカ?」

小さな疑心暗鬼のしずくは
僕らの心を
一瞬で
錆びつかせる

かつての輝きは瞬時に
赤茶け
汚れた廃物に変わる

僕は画面に向かい
一体なにをしていたのだろう
あの馬鹿騒ぎはなんだったのだろう
あの毎晩の楽しい大騒ぎは

一夜の夢に
すぎなかったのだろうか

なにもかもが恐ろしく見えてくる
なにもかもが歪んで見えてくる
不安だけがべったりと心に寄り添う

僕らはとても弱いから

だからこそこの架空世界を愛し
またこの架空世界で痛みを負う

だけど
僕が君という大切な友達と出会えたのは
この場所なんだ

ここに来れば君に会える

ここはそういう場所

待ってる
君に会いたい




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